Realistic Fantasie

リプロダクティブ・ライツから考える女性器切除~「文化、風習」といえるのか?

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FGM(Female Genital Mutilation)の由来:1990年インター・アフリカン・コミッティ(IAC)総会で、女性器切除(Female Genital Mutilation)という名称を用いることで統一されました。それまで「割礼」という表現を用い、FGMの本質となる「性器の切除」という事実を伝達する言葉ではありませんでした。そのため、女性器を取り除くという非人道性を曖昧にする表現を改善したものです。このFGMという呼称はEUやアフリカ連合等で正式に採用されているものです。

女性性器切除の定義と分類

国際会議ではWHO(国際保健機構)の定義を使います。

・タイプ1:クリトリデクトミー(clitoridectomy)
クリトリスの包皮のみもしくは先(柔らかい部分)も含めた除去。陰部閉鎖は行わない。

・タイプ2:エクシジョン (excision)
クリトリス切除と小陰唇の一部または全部の切除。地域によっては出産を楽にするためとしてさらに膣が切除されるが、実際には逆に困難にしてしまう可能性が高い。伝統的に成年に達した際の儀式として行われるが、最近では若年化が進み、もっと幼い少女に行われる。FGMを受ける少女のうち、タイプ1とこのタイプを合わせて約85%である。

・タイプ3:陰部封鎖(ファラオリック割礼、infibulation)
外性器(クリトリス、小陰唇、大陰唇)の一部または全部の切除および膣の入り口の縫合による膣口の狭小化または封鎖。その際尿や月経血を出すための小さな穴を残し、少女の両脚をしっかり縛って数週間傷が治るまで固定する。主に4歳から8歳の少女に行われ、こちらも若年化が進んでおり、生後数日に行なわれた例もある。FGMを受ける少女のうち、約15%がこのタイプになる。

・タイプ4:その他の施術(タイプ1-3に属さないもの)
その他、治療を目的とせず、文化的理由のもとに、女性外性器の一部あるいは全部を削除し、あるいは女性の生殖器官を意図的に傷つける行為のすべてを指します。

ドライ・ハーブを膣にいれる性交や婚姻前の大陰唇伸張などの行為はタイプ4に該当します。

これらの行為は不衛生な状態の中行われ、大量出血、施術中の激痛、回復まで続く痛み、様々な感染症などを引き起こす。また、手術中のショックで意識不明や死亡に至る場合も多々あります。
後遺症としては排尿痛、失禁、性交時の激痛、性行為への恐怖、月経困難症、難産による死亡、性感染症にかかりやすい、HIV感染の危険性が高くなるなど、女性の健康な身体や生殖機能にさまざまな悪影響があります。

結婚前に性交渉しないことや性欲を抑えることなどを目的としているとされ、主に10代前半の女性が処置される。不衛生な場所で医学的知識のない者が処置を行なうことがあるため、障害が残ったり死亡したりするケースもる。また、麻酔なしで処置され、トラウマ(心的外傷)の残ることもある。

性交のたびに激痛が走るため、女性の性欲が抑制されると誤解をされ、2500年以上も男性優位な社会の中受け継がれきた悪き伝統のひとつといえます。たとえば、エジプトでは陰部封鎖が行われている。結婚初夜に夫が縫い閉じられた陰部を切り開く部族がいる。自力で花嫁の陰部を開いて性交を果たせなければ面目を失うという。花嫁に激痛が走り、性交を拒み、排尿のたびに激痛のため静かになるのは当然のことといえます。

1970年代頃から著しい女性虐待であるとして国際社会から非難の声が強く上げられ、対する当事国では、自国の文化を否定するものとして、文化相対主義的論議を起こしました。しかし昨今では国際的世論とアフリカ連合内からの廃絶の声とが手を取り合った動きが活発化し始めている。2003年7月11日にはモザンビークの首都マプトにおいて、女性器切除の含めたあらゆる性暴力、性差別を禁じ、男女同権を定めた、人及び人民の権利に関するアフリカ憲章に関するマプト議定書 (Maputo Protocol) が採択されました。
(2011年現在署名46カ国、批准28カ国)

最近の動向では、西アフリカの指導者や、ケニアでは性器切除を禁止しているものの、部族による地方分権が進んでいることもあり、あまり効果がありません。いまだに医療施設で女性器切除が行われています。そして、女性器切除をしていない場合、ペニスが生えてくると医療機関の医療従事者である看護師が答えるという事実があります。

FGM廃絶の国際運動を行っているワリス・ディリーが1999年発表したデータによると年間に200万人、日間に5500人近い少女が性器切除を受け、性器切除された女性は1億3000万人以上で、累計では13億人にも達すると推定している。
女性器切除廃止のための女性団体、La Palabre(ラ・パラーブル)が設立された。同団体の欧州メンバーとして性器切除、性的暴力や強制結婚を綴った自伝「切除されて」の著者であるキャディ・コイタがいる。

アフリカ移民の増加で1980年代以降、欧州各地で社会問題になり、英国は85年、特別法を制定して英国内でFCM処置をすることやFCM目的で子どもを海外に送ることも禁止した。しかし、事実の把握が難しいことや親の責任を追及することになるため、過去に起訴されたケースはない。こうした現状に」英議会(下院)内務特別委員会は来年1月、FCMの刑事責任追及がなされない原因などを探る公聴会を開催することを決めている。ロンドンだけで過去3年半に2世や3世を中心に移民女性約2000人がFCM関連の治療を受けたとされる。国連やアフリカ連合(AU)は、女性虐待に当たるとしてFCMの撲滅を目標に掲げている。


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